昔二男の幼稚園で、役員の母親達とイベントの準備をしていた時のこと。
突然「来たら駄目って言ったでしょ!」と叱責の声が聞こえ、驚いてそちらを見
ると、女の子がランドセルを背負ったまま泣きそうな顔で俯いていた。
初めて見る子で、その子の顔には片側の頬一面にイチゴ状の赤い痣があった。
母親が娘を睨む目はまるで“忌み子”(いみご)を見るようで、女の子が可哀そうだっ
た。実は我が子に障害や特徴的な外見がある時、守るべき筈の親が子供の心を傷
つける一番の加害者になっている…というケースは珍しくないそうだ。
最近、プチ整形をする女子や“メイク男子”が増えているという。
ハッキリ言って見た目の気にし過ぎで、美容業界の宣伝に踊らされている感は否
めないが、でもまあ人はそれぞれ。問題は、若い人たちの間で“ルッキズム”が
蔓延していて、見た目の特徴による差別や偏見が増えているらしいことだ。
※ルッキズム = 外見至上主義や外見差別のこと。
同じ事をしても美男美女は高く評価される、というのは実験によって証明されて
いるそうで、確かに芸能界は言うに及ばす芸術家やYouTuberなどでも、美形で
なければここまで人気は出なかったろうと思われる人達がいる。
この程度の事なら特別に支障は無い。しかしこの社会では、就職の面接などで容
姿を理由に評価(時に差別)されることは普通に行われており、見た目が重要視さ
れる職業ならいざ知らず、特に女性の就職にそれが顕著だと言われる。
私が高3の時、真っ先に就職が決まったのはクラス一番の美人で、しかも就職先は
一部上場企業。当時大企業に就職できる女子は、余程成績優秀かコネ入社以外は
「男性社員のお嫁さん候補になれる人」と言われていたが、私ら平凡組はこの時初
めてそれが本当であることを知って、自嘲気味に笑いあったものだ。
その頃同じ就職組で、成績は良いのに面接でことごとく落とされると悩む男子生徒
がいた。彼の顔は、幼い時の大火傷が原因で皮膚が引きつっていた。
顔に生まれながらの特徴や目立つ怪我の痕のある人は、面接の時にそれが大きなハ
ンデになるのは今も同じだ。しかも彼らの場合、機能的な障害では無いという理由
で公的な支援は無く、障害者枠による採用も無いという。
「NPO法人ユニークフェイス」によると、外見の差別は障害者差別のように社会
に認識されたとは言えない状態で、自殺する人も無くならないという。
※外見による差別については、「NPO法人マイフェイス・マイスタイル」や、
当人達が本音で語った本(『顔ニモマケズ』等)にも詳しい。
「障害は個性である」と言う人達がいる。障害者本人がそう考え、それでポジティ
ブに生きていけるのなら問題無いが、実際は健常者が障害者に向かって言う場合が
殆どで、言われた本人は違和感を感じていることが多いとか。
確かに、障害者本人による「苦痛や不都合を伴った障害はハンデでしかない。欲し
いのはサポートや理解。」という言葉の方が、現実を直視していて説得力がある。
こうしてつらつら考えるに、やはりルッキズムが大手を振る社会は歪んでいる。
差別的で意地悪な心根は、表面だけ繕っても滲み出るもの。特に若い人には、軽薄
な風潮に踊らされず、人の立場になって考える想像力を持ってほしいと思う。