息子(Т)が大学生の時のこと。
部活の年末の飲み会が深夜に及び、帰宅の足が無くなった。そのため息子は大学の
部室で眠ることにし、1人でキャンパスに向かった。
距離は4㎞ぐらいだろうか。夜中の雪道で、途中には車の通りの多い大きな橋(長さ
約500m)もある。酔っていたとはいえ、何とも無謀な判断をしたものだ。
さて明け方に目覚めた息子は、自分が橋の欄干の前で胡坐をかいて座っていること
に気付いた。睡魔に勝てず、いつの間にか橋の上で眠ってしまったらしい。
それを笑って話す息子に、車に轢かれることも凍え死ぬことも無く、よくぞ無事に
戻ることが出来たものだと私は思わず絶句。
息子の話には続きがある。
目が覚めた時息子の膝の上には、二匹の猫が丸まって寝ていたそうだ。「もう帰り
なさい。」と言ってそっと放したが「まだ小さかったから連れて帰れば良かった。」
と言う。
私も何度かその橋を渡ったことがあるが、猫が散歩するような橋ではない。まして
冬の夜中のことだ。真実は分からないが、私は目には見えない何者かが息子が凍え
ないようにと、その猫達を差し向けてくれたのかも知れないと思い、感謝と共に
猫達がその後も元気でいることを祈った。
この世界には面白い偶然がいっぱいある。しかし中には、本当に偶然なのか?と
驚くような話も珍しくない。次の話も息子(T)の体験だ。
仕事からの帰り道でのこと。車を走らせていたら、突然ライトの先に口からダラダ
ラと真っ赤な血を流したお婆さんが現れた。一瞬「 幽霊に出会ってしまったか。」
と思ったほど不気味だったが、すぐに車から降りて彼女を助けた。
真相は、近所を徘徊していたお婆さんが転んでしたたか顔を打ちつけてしまった…
というものだったが、実はその日息子は (偶々)いつもとは違う道を通って自宅に
向かっていたそうだ。
「この世に偶然は無い。全て必然です。」という人達がいる。私はそれは違うと思
うが、何かに助けられることや導かれることは確かにある。
息子のこの2つの出来事の真相は分からない。ただの偶然ということも有り得る。
しかし私は自分の今迄の体験から、確証は得られなくともその結果を天に感謝する
ことを忘れてはいけない、そう思っている。