ほたるBBの 絵と 本と 雑感日記

60代後半に再開したお絵描きと、読書の備忘録。考えさせられたことなども綴ります。

貧乏舌

“貧乏舌”の意味を調べると「何を食べても美味しいと感じる人」とある。

これは誉め言葉ではなく、「味覚が鈍感で高級料理の良さが分からず、安物で

満足できる人。」という意味らしい。そのためか世間では、好き嫌い無く何で

も喜んで食べる人のことを、少し憐れむように馬鹿にする向きがある。

 

しかし食べ物を選り好みする理由が只の好き嫌いだったり、逆に何でも喜んで

食べるのは小さい時からの躾や、感謝の心の表れであることも珍しくない。

 

1993年に、冷夏によるお米の不作で国産のお米が足りなくなり、国が急きょ

タイ米を輸入したことがあった。(「平成の米騒動」と言われている)

タイ米は粒が細長く粘り気が無いのが特徴で、チャーハンやピラフなどに適し

ているのだが、日本のお米と違って炊くとパサパサになるので、あちこちから

タイ米は不味い」という声が上がった。

 

しかしこれは「わが県のラーメンが一番旨い。」と言いきる人と同じで、実は

“旨い・不味い”の味覚は、子供の時からの“慣れ”の部分も大きく、タイ米

に至っては、何よりも本場とは炊き方そのものからして違うと聞いた。

 

知人のF氏は若い時は都会で暮らし、外国暮らしの経験もある人で、そのせい

か自分は舌が肥えていると言ってはばからず、時々「こんなのが美味しいか?」

「貧乏舌w」などと上から目線なことを言うため、ヒンシュクを買っていた。

 

もし馬鹿舌と言われたなら、毎日ご飯支度をする身としては心配になるが、私

は「貧乏舌で結構」と思う。食べ物や料理法に良し悪しがあるのは本当だし、

本物の食通の話は面白い。しかし料理や人を馬鹿にするのは思い上がりでしかな

いので、気を付けたい。

 

思い返すに、(数える程しか無いが)料亭の高級料理や巷には出回らないという

鮮度抜群の食べ物を頂いた時は、あまりの美味に驚いたものだ。しかし、自分

で分相応に節約・工夫した料理が美味しく出来た時の、ささやかな幸せも捨て

たものではないと思う。

 

いずれにせよ昔から言われるように“空腹こそ最高のスパイス”で、どれ程の

高級品でも、思い切りお腹を空かせた時に口にする食べ物の旨さには叶わない。