[内容]
インドに亡命するチベットの子供達に同行して撮影された、短編ドキュメン
タリー。 (2000年 製作国ドイツ) 映画賞受賞
[感想]
映像は雪のヒマラヤを越えて、道案内の人と迎えの男性が落ち合うところか
ら始まる。寒さでガチガチになった子供達の、赤い頬と擦り切れた服。中国
の追手から逃れる恐怖や、親と離れた不安で涙を流す様子が切ない。途中で
亡くなる人も居るそうで、凍傷で手足を切り落とした子の写真に息をのんだ。
ガイドを含む10人ほどの人間の内、半分は10歳前後の子供達だ。親と離れて
の苦しい逃避行で、行先はインドにあるチベット亡命政府の子供村。
学校に通って教育を受けることが目的で、親は子供とは二度と会えないこと
を覚悟して、ガイドに子供を託している。彼らが無事に亡命政府の拠点に辿
り着いた時は、私も胸がいっぱいになった。
中国の侵略により、1950年から100万人以上のチベット人が殺されたという。
1959年のチベット動乱の際には大勢の人がインドに脱出し、ダライ・ラマを
頂点とした亡命政府が作られた。現在チベットという国はなく、中国の中の
1つの自治区とされていて、多くの中国人が移住している。
今回10数年ぶりにこのDVDを観て、今でもこのような事が続いているのだろ
うかとネットで調べたところ、結果は思いもかけないものだった。
その後ヒマラヤの亡命ルートの国境管理が厳格化され、ここ何年も「チベット
子ども村」の学校に入学する亡命者はいないという。それどころか、インドで
は自由に仕事を選べない為、豊かな欧米への再亡命を希望したり、経済発展
を遂げた中国で働くために、自治区に戻る難民2世が少なくないそうだ。
今年現職の首相の任期満了に伴い、世界30カ国のチベット難民ら有権者によ
って投票が行われ、亡命政府の新首相が誕生したが先行きは厳しいという。