[内容]
横浜市の保健所の職員である獣医師が、ノラ猫を地域で飼育管理する方法と
その事例を紹介。副題は『ノラ猫と上手につきあう方法』
[感想]
著者は “地域猫”の発案者で、本書ではノラ猫の適切な管理方法と、このやり方
が生まれるまでの経緯も語られている。
これは単なる猫愛護の活動ではなく、猫トラブルを無くすための住民活動であり、
ノラ猫との共存の為には、その地域に住む猫好き、猫嫌い、無関心な人、皆で
話し合うことが重要だという。
世の中には昔から、ノラ猫に餌をやるだけで、後始末や子猫が産まれることには
全く無頓着な人がいる。地域猫という言葉が全国に広がり出したところ、そういう
人達の中で一部、この言葉を都合よく解釈してトラブルを起こす人が出始めた。
著者もそれを憂えて、後年に再度「不妊去勢手術の実施」「餌の管理、フン掃除、
周辺の美化」の徹底を訴え、地域猫というのは、最終的に飼猫にしていくための
過渡期的対策であると述べている。
私の知人にも、厳密にいうと地域猫とは違うが、川べりに住み着いた猫達に不妊
手術を施し、子猫と病気の猫だけ引き取って餌やりを続けた人がいる。
(7~8年後、最後の1匹になった時にその猫も家に入れた。)
そんな彼女を悩ませたのは猫嫌いの人と思いきや、明らかに飼猫と思われる猫を
これ幸いとばかりに捨てていく人達だったという。
地域猫に反対する人もいるが、ノラ猫だって生きている。不妊手術を施すことで望
まれない命は作らず、しかし今生きている猫たちの天寿は全うさせてやりたいと、
そう考える人は少なくない。目標は飼主のいない猫を減らすことで、今のところ
これに代わる良案は無いと言われている。