ほたるBBの 絵と 本と 雑感日記

60代後半に再開したお絵描きと、読書の備忘録。考えさせられたことなども綴ります。

臓器移植 我、せずされず (池田清彦) 小学館文庫 

[内容]

臓器移植に反対する理由を、医学、経済、倫理など多方面から論理的に説明。

[感想]

著者の臓器移植に対する指摘や危惧は、至極尤もだと思いながら読んだ。

 

以下、バッサリと切ってる箇所を一部抜粋。

◎「脳死者への治療は死体棄損罪」という移植医の発言に対して、「ならば脳死

 者からの臓器の移植は何罪なのかと問う。」

◎早く臓器を取り出したいがために判定が雑となり、その為に治療そのものが

 充分になされないとも限らない。(実際に起きた事件も書かれている)

◎臓器移植はドナーにとってはボランティアだが、移植医と移植産業にとっては

 商売なのだ。

 

他にも、生前に拒否の表示をしていないと勝手に臓器を摘出されてしまう国の

話、臓器売買の犯罪についても触れていて、最後の章ではこう結論づけている。

市場経済にフィットする代替医療(再生医学)はすぐそこまで来ている。経済的、

人的資源をこちらに振り向ける方がはるかに合理的だ。」

 

以前、ある母親のこんな告白文を読んだことがある。「病院で移植を待つ隣の

ベッドの子が亡くなった時-(略)-ライバルが1人減った…と思った。」

…この母親の心を誰が責められよう。だが私は、1997年に臓器移植法が施行

される前から、自分はドナーにはなりたくないと思ってきた。

 

それは、臓器移植の歴史と実態が書かれた本を何冊か読んで、脳死のドナー

はもう ただの“臓器保有者”でしかなく、ひたすら臓器を新鮮に保つ為の処置

だけが施されることと、臓器を取り出す時のドナーの反応に戦慄したからだ。

 

今は技術的にも倫理的にも昔とは違うかもしれない。だがやはり、移植よりも再生

医療の方に力を注いでほしいと思う。実現への道のりは厳しいようだが…。