[内容]
同時多発テロで妻子を失った男性と、彼を立ち直らせようとする友人の物語。
(2007年 製作国アメリカ)
[感想]
それぞれの立場の人の、理屈じゃない思いがよく描かれていた映画だった。
ニューヨークで歯科医院を営むアフリカ系アメリカ人のアランは、街で偶然
大学時代のルーム・メイト、チャーリーと再会する。
しかし、9.11の飛行機事故で妻と娘たちを亡くしたチャーリーは、精神を病ん
でいてまるで別人だった。最初は声を掛けてもアランのことが分からず「俺の
知り合い?」と聞かれる始末。街なかを移動する時はいつも電動スクーターだ。
チャーリーは歯科医師の仕事を辞めていて、アパートで1人、事故の賠償金で
暮らしていた。何故か数カ月おきに、1人で黙々と部屋のリフォームをし、それ
以外は部屋の中でただゲームをするだけの日々。
そんな彼を立ち直らせようと、アランは昼も夜も彼と付き合うようになるが、
そのため妻との関係がギクシャクしてくる。
ある時、今迄頑なに家族のことを口にしなかったチャーリーが、突然涙を流し
ながら話し始めた。テレビの報道でテロを知った時のショック、妻子への後悔
の思い、頻繁に部屋のリフォームをする理由も。
しかし彼の本当の心を知らない妻の両親は、亡くなった家族のことを思い出そ
うともしないと彼を責め、裁判で強制入院させようとする。
その時、チャーリーが言う。「あなた達はいい。2人で悲しみを分かち合える。
私には誰を見ても妻に見える。すれ違う少女は娘に、犬は愛犬にも見える。」
彼の今迄のどの言葉よりも、これには泣かされた。
この後、裁判長やアランの元ストーカーの女性など、思いがけない人が
チャーリーの前途に希望を与えてくれる展開となるのが嬉しい。