[内容]
サムスンの元社員による、不正の内部告発本。副題は『告発された巨大企業』
[感想]
著者は元特捜検事で、サムスンで法務スタッフとして7年間勤めた後に退職。
サムスンは韓国最大の財閥で巨大企業グループだが、その実態は一握りの親族
によって運営され、政財界、法曹界、マスコミへの賄賂と不正にまみれたものだ
という。その内容が赤裸々に書かれた本書は、韓国でベストセラーとなった。
著者はサムスンの不正行為を、以下の3つのカテゴリーに分けて説明。
「組織的な裏金作りおよび脱税と、これを隠蔽するための会計操作」
「経営権継承をめぐる違法行為と、この過程で犯した裁判での証拠操作」
「政界、官界、法曹界、マスコミ界への広範囲にわたる違法ロビー活動」
サムスングループでは、会社の財務実態は系列社の管理担当と財務チームの
運営担当でなければ知ることが出来ず、裏金を扱うことが彼らの業務だとか。
サムスンの不正の根は裏金で、役員などの借名口座に裏金を振り込み、不動産は
他人の名義を借りて購入。銀行や証券会社が私金庫の役割を果たしているという。
一族の仕事ぶりや私生活についても書かれており、その中から一部を抜粋。
・イ・ジェヨン(サムスン創業者の孫)にサムスングループを引き継がせる為に、
役員や社員はあらゆる不法・脱税行為を犯さなければならなかった。
・莫大な資金を投じたイ・ジェヨンのインターネット事業への投資の失敗。
・事業の中には、会長の個人的な趣味や私的な利害のためのケースも多い。
著者はサムスン退職後に就職するも、サムスンからの圧力で弁護士事務所を追
われ全てを失う。一時は監視・盗聴・尾行から逃げる為にモーテルを転々とする
生活を送り、告発後は左翼共産主義者だと非難され、マスコミからは無視された。
つい先日(2020年5月)、サムスン電子の副会長イ・ジェヨン氏が世襲をやめる
と表明。今、内外から注目を集めている。