[内容]
震災で家族を失った少年の心の再生と、それを支え見守る男性の物語。
(2018年 製作国 日本)
[感想]
豆腐屋の勇作は妻亡き後、移動式販売店を営みながら、薪でお風呂を焚き
娘と2人囲炉裏端で食事をとる、そんなゆったりとした生活を送っていた。
豆腐作りは京都で修行を積んだ腕で、居酒屋にも届けており、その実直な
性格もあってなかなかの評判だった。
ある日勇作の家に、一人の小学生が警察官に連れられて来た。聞くと亡き妻
の遠縁の子だという。少年(政美)は東日本大震災で家族全員を亡くしており、
その後親戚に引き取られたが、どこからも持て余されてきたという。
最初は断った勇作だったが、結局引き取ることに。
3人の生活が始まるが、政美は暗い顔で全く口をきかず、食事も部屋に運ん
であげてやっと食べる状態。勇作は心を閉ざすそんな政美を見て、無理はせ
ず静かに見守ることにする。
政美役の子はオーディションで選ばれたそうで、ぎこちない感じに見えるが
それが却って役柄にピッタリとはまり、一層政美の不憫さが伝わってきた。
そんな政美も、少しずつ勇作に心を開いていき、豆腐屋の仕事を手伝ったり、
子供達の球技に飛び入りで参加したり。
だがある日、一人で留守番をしている時に大きな地震が来てパニックになり、
家を飛び出してしまう。消防団が総出で捜索するも、勇作は 今政美を助け
たら男として強くなれないと言って、敢えて自宅で帰りを待つ。
最後に政美と勇作が、宮沢賢治の「雨にも負けず…」を暗唱するシーンがある。
観客にもその詩が静かに心にしみて来て、勇作に抱きつく政美を見ながら改めて、
たった一人でも愛し支えてくれる人がいることの大切さを思った。