[内容]
売れっ子漫画家の著者に大きな影響を与えた、絵の師匠との出会いから
死別までを綴った自伝。この作品で『まんが大賞2015』を受賞している。
[感想]
夜遅くに1冊だけ読んで寝るつもりが、面白くて結局5巻全部読んでしまった。
竹刀を持った熱血講師(男性)が強烈で、時々笑いながらも最後には涙がホロリ。
著者はインタビューで、「エピソードを大げさに盛る事は一切やってなくて、こっ
そり秘密を打ち明けるような気持ち。」「結局は懺悔というか…。」と語っている。
高3のアキコは漫画家志望だが、美大受験のために絵画教室に通い始める。
そこは老人も子供も一緒に学ぶ形式で、講師の日高は誰に対しても厳しかったが、
仮病を使うアキコを本気で心配するような、根は思いやりのある人間だった。
何とか美大に合格したのはいいが、今迄頑張って来た反動でアキコは全く絵を
描かなくなり、授業をさぼって遊びほうける毎日。夏休みに帰省するも、当然の
結果として絵の課題で行き詰まるが、日高のアドバイスの一言で無心に描くこと
が出来るようになる。
日高の「絵は毎日描かんとダメや」「ただ描けばいいんや目の前の物を」は、
本書の中で一番私の心に響いた言葉だ。ハードルはかなり高いが…。
卒業後は日高の教室でアルバイトをしていたが、父親に無理やり就職させられ、
そこを辞めたいばかりに、嘘をついて教室を放り出すようにして漫画家を目指す。
調べたところ日高先生(本名は日岡健三)は57歳で病死しており、驚くのが「亡く
なる際にきちんと正座して合掌。そしてそのまま永眠。」と書かれていたことだ。
想像した以上に芯のある人だったようで、この漫画の受賞で日岡氏の実力が再評
価されているという。