[内容]
ガス室で殺された少年を、ユダヤ教の形式で正しく埋葬する為に奔走した男
の2日間を描いた作品。 (2015年 製作国 ハンガリー) 映画賞受賞
[感想]
1944年、ハンガリー系ユダヤ人のサウルは、アウシュビッツの収容所で
ゾンダーコマンドとして働かされていた。
その仕事は、列車で運ばれて来た大勢のユダヤ人を、死のシャワー室に案内
して、死亡後直ちに後始末することだった。
ユダヤ人の服から金目の物を取り出してナチスに渡し、血のこびり付いた床を
黙々と洗い流す。だが彼もまた、3~4か月後にはここで殺される運命だ。
この映画は映像が少し変わっていて、まるで観客もずっとサウルと一緒に動い
ているような臨場感がある
周囲の悲惨な様子は全てぼかされているのだが、しかしそのぼかしの映像が、
若い時に観たドキュメンタリー映画「夜と霧」を思い出させるようなリアルさで、
むしろ強烈に迫って来た。
ある日サウルは、ガス室で生き残った息子が、息の根を止められた場面に遭遇
する。息子が解剖されると知ったサウルは、彼をユダヤ教に則って埋葬する為に、
死体を持ち出してラビを捜しまわる。
ところが、そんなサウルを見て仲間は「お前に子供はいない筈だ。」と言う。
少年が息子だというのは彼の勘違いなのか、頭がおかしくなっているのか。
その後反乱を起こした仲間と共に、サウルも少年の死体を抱えて森に逃げるが…。
ハッピーエンドではないし、勧める相手を選ぶ映画だと思うが、今迄に見たこと
の無い少し変わった描かれ方をしていて、最後まで引き込まれるようにして観た。