[内容]
信販会社の督促部署に配属された女性の、涙ぐましくも逞しい奮闘記。
[感想]
著者がキャッシング専門の督促部署に配属されたのは、新卒で就職してすぐ
のことだった。
当時出来たてほやほやのコールセンターには、システムもPCも何も無くブラック
部署だったという。一応教育係はいるが、すぐにベテランと机を並べて仕事をさ
せられ、当然成績は最下位。
毎日毎日借金の督促の電話をし、顧客に怒鳴られるなどは日常茶飯事で脅迫
されることも珍しくない。新人は毎年入って来るが、心折れて次々と辞めていく。
それでも苦情処理係よりはマシだろうと思って読んでいたが、開き直る客のなん
と多いことか。事情はあろうが、逆切れされるのはたまらない。
このような、感情のコントロールや忍耐が絶対に必要な職業を“感情労働”という
そうで、他の仕事より心を病む確率が高いという。
そんな中で、悩みながらも工夫を凝らして頑張る著者には、感心した。
そのまま書けないことも多かったと思うが、沢山の事例がコミカルな文章で書か
れていて、シビアな内容なのだが時々笑いながら読んだ。
“お客さまタイプ別攻略法”は、他の職種にも参考になりそうだ。
「誰かから傷つけられることは沢山有った-(略)-今迄私が先輩やお客様から
もらってきたのは これからより強く生きていくための、武器と盾だった。」
これは、頑張り通したからこそ言える言葉だろう。
著者が本書を届けたかった3人の中に、統合失調症の弟さんも含まれていて、
この本の底に流れる著者の優しさの訳が、少しだけ分かった気がした。