高校生の時に絵を描きたいと思うようになり、高3で部活を美術部に変えた。
しかし1学期の間に、顧問の教師が部室に来たのはたった1度だけ。生徒の
我流の石膏デッサンを見て回って、一言も無く出て行った。時間は約1分。
夏休みが近づいたある日、見慣れない男子生徒が美術室に居て、自分の描い
た油絵を顧問に見せていた。私の隣に居た生徒が教えてくれた。彼は美大志望
で、顧問の自宅教室で月謝を払って個人指導を受けているのだと。
今後も顧問が部室に来ることや、部員にアドバイスすることは殆ど無いと知り、
ガッカリした私は、部活は辞めて町の絵画サークルに入ることにした。
だが我が家は子沢山で、当時は大学生の兄の下宿代などでお金のかかる真っ盛り。
とても遊びの為に油絵の道具を揃えたいとは言えなかった。
そんな時ある先生が私ら生徒に、「誰か家庭教師をしないか。」と声を掛けてきた。
教えるのは6年生の女の子。(この辺りは大学から遠くて、大学生はいなかった。)
教室で手を挙げたのは私だけだったが、他のクラスも合わせると希望者は全部で
5人になった。だがラッキーなことに、女の子の親が女生徒を希望した為、私が
選ばれて、学校からも特別アルバイトの許可をもらうことが出来た。
私は希望通り町のサールに入会し、ここでも指導などは無かったが、先輩方と
感想を言い合う楽しい数年間を過ごすことが出来た。
私達はあの時顧問に対して「部活は放ったらかしか。」と思ったが、“部活顧問”は
教師の本来業務ではないので、断りたいと考える教師は多いそうだ。それにしても
公立学校の常勤教師が、部活はそっちのけで自宅で副業…やっぱりおかしいでしょ。