[内容]
成田空港で不法入国者として逮捕された、アフガニスタンの青年の自叙伝。
[感想]
アリ・ジャンが日本に来たのは2001年8月。 まだ18歳だった。
本書は彼からの聞き書きを監修・補筆して、2004年に出版されたもの。
母国で父と兄がタリバンに捕らえられ、母親から「あなただけでも生き延びて」
と言われて飛行機に乗ったが、ブローカーが彼のパスポートとビザを持ったまま
成田で消えてしまった。その時から7か月もの間、絶望的な気持ちを抱えて
入国管理センターで過ごすことになる。
当時、収容所ではアフガニスタン人の半数が自殺未遂を起こしており(19件)、彼
もその1人だった。皆で首相に何度も手紙を出したが、何も変わらなかったという。
「アフガニスタン難民弁護団」をはじめ、大勢の支援者の尽力である日やっと解放
されるが、3か月後に法務省が裁判を起こし、今度は難民側が負けて入管が出頭
を要求してきた。
その後紆余曲折があり、夜間中学で学びながらも強制送還への不安を抱えた日々。
本書は、「家族探しプログラム」で見つけてもらった母親への手紙で終わっている。
調べたところ、彼は2006年に結婚して子供もおり、現在も日本で暮らしていた。
母親とも母国で再会しており、本当に良かったと思う。 しかし彼は幸運な例外だ。
2018年は10,493人の難民申請に対して、認定されたのは僅か42人だという。
外国の難民問題を見れば「可哀そう」だけでは対処できない難しさも分かるが、
それにしても酷い。皆がもっと関心を持たなければ救われないと思った。
※日本に来た難民の問題は、「難民支援協会」のHPに詳しい。