[内容]
ある日突然誘拐され、12年間も奴隷として生きた黒人音楽家の実話。
(2013年 製作国 米・英)映画賞受賞
[感想]
私が若い時に初めて見た奴隷のドラマ「ルーツ」も衝撃的だったが、この映画は
その「ルーツ」にも匹敵する秀作だと思う。
南北戦争前のニューヨーク。 バイオリン奏者のソロモンは自由黒人として暮ら
していたが、ある日騙されて南部の綿花農園に売られてしまい、奴隷としての
過酷な人生が始まる。
南部の白人たちは、善良な市民として普通に暮らしながら、黒人奴隷に対しては
どんなむごい仕打ちも許されると思って、したい放題だった。
特に選民主義者の農園支配人の残酷ぶりは、見てるのが辛くなるほど。
ソロモンが救われる切っ掛けとなったのは、一人の大工との出会いで、彼に託した
手紙を読んだ知人がすぐに迎えに来てくれたからだった。
妻子の元に帰ることだけを願って耐えてきたソロモンだったが、誘拐されてから
既に12年もの歳月が流れていた。
ところでソロモンが助けられたのは、元々は“自由黒人”だったからであり、彼は
例外中の例外。 彼が一人だけ助け出された時、残された奴隷仲間の悲しみと
絶望はいかばかりだったろうと、どうしても気持ちはそちらの方に行く。
以前テレビで黒人男性が言っていた。「差別されることだけが辛いのではない。
それが死ぬ迄続く現実が辛いのだ。」
この映画は、本人が実際に解放後に書いた体験記を元に作られたもので、彼は
出版後も、奴隷解放に携わる人達の手助けを続けたという。
“現代奴隷”の定義では、今世界には何千万人もの奴隷が存在すると言われる。