「内容」
未婚で妊娠した女性が、義兄から瀕死の火傷を負わされた経緯と、その後
の半生を綴っている。
「感想」
著者(仮名スアド)は、“名誉殺人”を生き延びた初の証言者と言われている。
事件が起きた場所は中東ヨルダン。両親も承知の上での出来事だった。
この時スアドの年齢は17才で、恋人だった男が咎められる事は無かった。
運び込まれた病院で未熟児を出産した彼女と、乳飲み子の決死の救出を実現
させたのは、福祉団体で働く一人の女性だった。
この女性は後に、女性と子供の保護団体を設立し、現在も活動している。
スアドの火傷は顎と胸がくっつく程の重傷だったが、20数回の手術を経て、現在
は結婚して第二の人生を歩んでいる。
彼女の育った農村では、女の子は “家畜より価値の無い奴隷” 扱いで、スアド
は子供の時から、両親が日常的に羊や鶏、更には生まれたばかりの女児までも
簡単に殺すのを見て、いつか自分も殺されるのではないかと怯えていたという。
実際母親は、妊娠した彼女を恥じて毒殺しようとしている。
それにしても、名誉殺人とは何と恐ろしい因習だろう。
宗教と名誉殺人は全く関係なく、また極一部の地域の事と言われるが、中東や
アフリカの多くの国で頻発している。犠牲者は世界で年間5千人とも言われるが、
実際はそれを上回ると考えられ、自殺を強要されることも多いそうだ。
インドでは相次ぐレイプ焼殺事件に、今月に入ってからも女性達による全国的な
抗議デモが続いている。これらはカースト制度、男尊女卑がもたらした野蛮で
おぞましい因習が今も続いている証で、やっと明るみに出たに過ぎないという。