ほたるBBの 絵と 本と 雑感日記

60代後半に再開したお絵描きと、読書の備忘録。考えさせられたことなども綴ります。

生きながら火に焼かれて (スアド) ソニーマガジンズ

「内容」

未婚で妊娠した女性が、義兄から瀕死の火傷を負わされた経緯と、その後

の半生を綴っている。

「感想」

著者(仮名スアド)は、“名誉殺人”を生き延びた初の証言者と言われている。 

事件が起きた場所は中東ヨルダン。両親も承知の上での出来事だった。

この時スアドの年齢は17才で、恋人だった男が咎められる事は無かった。

 

運び込まれた病院で未熟児を出産した彼女と、乳飲み子の決死の救出を実現

させたのは、福祉団体で働く一人の女性だった。

この女性は後に、女性と子供の保護団体を設立し、現在も活動している。

 

スアドの火傷は顎と胸がくっつく程の重傷だったが、20数回の手術を経て、現在

は結婚して第二の人生を歩んでいる。

 

彼女の育った農村では、女の子は “家畜より価値の無い奴隷” 扱いで、スアド

は子供の時から、両親が日常的に羊や鶏、更には生まれたばかりの女児までも

簡単に殺すのを見て、いつか自分も殺されるのではないかと怯えていたという。

実際母親は、妊娠した彼女を恥じて毒殺しようとしている。 

 

それにしても、名誉殺人とは何と恐ろしい因習だろう。 

宗教と名誉殺人は全く関係なく、また極一部の地域の事と言われるが、中東や

アフリカの多くの国で頻発している。犠牲者は世界で年間5千人とも言われるが、

実際はそれを上回ると考えられ、自殺を強要されることも多いそうだ。

 

インドでは相次ぐレイプ焼殺事件に、今月に入ってからも女性達による全国的な

抗議デモが続いている。これらはカースト制度、男尊女卑がもたらした野蛮で

おぞましい因習が今も続いている証で、やっと明るみに出たに過ぎないという。