「内容」
実在した音痴のソプラノ歌手と、彼女を支えた夫と、その取り巻き達の物語。
(2016年 製作国 イギリス)
「感想」
マダム・フローレンスは資産家で、ニューヨークの音楽界のパトロンでもあり、
社交界では別格の存在だった。
彼女は最初の結婚の時に夫から病気をうつされ、その後遺症の為に現夫とは
形だけの夫婦で、しかも夫は妻に隠れて愛人と暮らしていた。
そんな夫だがフローレンスによく尽くし、ソプラノ歌手としての夢を追い続ける
妻の為に、声楽の指導者とピアノ伴奏者を雇い、レッスンを始めさせる。
更にリサイタルを開く時は、彼女を絶対に批判しない取り巻き連中を集め、
マスコミを買収して絶賛させるという徹底ぶり。
ところが厄介なことに、勘違いしたフローレンスはレコードを出した上に、今度
はカーネギーホールで歌うと言い出す。
歌唱力抜群のメリルは、プロから音痴の歌い方の指導を受けたそうで、
最初フローレンスの歌声を聞いた時は、音痴が上手すぎて爆笑してしまった。
ピアノ伴奏者役の男性も笑わせてくれるが、彼のピアノは実際にプロ並みの
レベルだという。 今でこそ日本人も普通にピアノを弾くが、私が子供の時は
アメリカの俳優にはピアノを弾ける人が沢山いることに驚いたものだ。
フローレンスはこの公演の1か月後に76才で病死したが、1994年にカーネ
ギーホールで開催された彼女のこの公演は、今も一番人気だそうだ。
本当は、お金の為に誰もフローレンスに真実を言わず、恥をかかせてるだけ
…と言ったら身も蓋もないが、ストーリーと演技の良さで楽しい映画に仕上がっ
ている。 ラストに流れるフローレンスの歌は魅力的で、聞き惚れた。