「内容」
中高年派遣労働と、国や企業・派遣会社の実態が詳細に語られている。
副題は「人材派遣業界の闇」
「感想」
著者は元アナウンサーで、退職後に派遣で働きながら執筆活動を始めた人。
全部本人の実体験なので、書かれている内容に臨場感がある。
派遣制度は1995年に経済連の方針で大きく変わり、今では官公庁、自治体、
外郭団体にまで拡大していて、著者はこの制度を「労働者カースト」と言う。
派遣はただでさえ不遇・不本意な状況に置かれがちなのに、差別が本当に酷い。
食堂やエレベーターは使用禁止、自販機も禁止で派遣社員はコンビニで買え。
日雇い(30日未満)の人間には現場の備品を使わせず、急ぎ自腹でカッターや
軍手を買いに行かせる。
等々上記は序の口で、驚くような酷い話が続き、それでも皆我慢して働いて
るのは、中高年の厳しい転職事情のためだという
雇用側には福利厚生費などの問題があって正社員と同じには出来ない、とも
言われているが、派遣社員にきちんと配慮している会社も多く、ネットでは
「雇用側の怠慢」「非正規に対する優位性を意図的に顕示」などの意見もある。
派遣労働で「精神をやられますね」と嘆く中高年が少なくないそうだ。
就業条件の外に、正社員の横暴さも原因の一つで、本書でも信じられないよう
な実例が幾つか挙げられている。
昔から差別する側の常とう句として、「差別ではなく区別だ。」というのがある。
だが極端な区別(待遇格差)は生産性の低下を招くと言われ、世間の目も厳しいの
に何故改善されないのか、不思議でさえある。