「内容」
我が子を厳しくも深い愛で育てる母親と、耳の不自由な男の子の物語。
(1999年 製作国 中国) 映画賞受賞
「感想」
リーインは夫と離婚しており、夫からの養育費が少ないため暮らしは厳しい。
聴覚障害の息子は、補聴器を着ければかなり会話が理解できるので、普通
学校で教育を受けさせたいと思い、一生懸命字を教えたりして毎年小学校
の入学試験を受けさせていた。
しかし今年は学校長から聾学校に行くことを勧められてしまい、思わず「補
聴器が普通じゃないなら、メガネはどうなんですか?」と反論してしまう。
息子はいつも苛められていて、ある日大事な補聴器を壊されてしまう。
だが補聴器は高価でそう簡単には買えず、かと言って別れた夫は再婚して
いて、息子に対する愛情も薄く、全く当てにならない。
リーインは新しい補聴器を買うために、本の露天商など、幾つも仕事を掛け持
ちするが、次々と難題がふりかかる。
それでも必死に頑張るリーインの逞しさと息子への愛は素晴らしい。
素晴らしいが しかし、“普通”にこだわり過ぎることが却って、いつか息子を
追い詰めてしまうのではないかと、見ていて切なくなった。
この映画には結末らしい結末は無く、それでもこの母と子はきっと真っ当に逞
しく生きていけるだろうと、希望の持てるラストになっている。
息子役の子は、実際に聾学校に通う聴力障害者だ。
コン・リーは今回は殆どノーメイクで通したそうだが、母としての眼差しが慈愛
に満ちていて、確かに今まで観た彼女の映画の中では一番きれいだった。