ほたるBBの 絵と 本と 雑感日記

60代後半に再開したお絵描きと、読書の備忘録。考えさせられたことなども綴ります。

シズコさん (佐野洋子) 新潮文庫

 

 「内容」

100万回生きたねこ』の著者が、実母との確執と和解を綴った本。

 

「感想」

あの絵本の作者にふさわしく、辛口で手厳しいのにどこかサバサバしていて、

文章にもユーモアがあり、面白く読んだ。

 

 

終戦の時に、中国から5人の子供を連れて引き揚げてきた逞しい母。

夫の死後、女手で子供達を大学まで出し、家事も人付き合いも完璧だった母。

しかし (母の)障害のある妹弟には冷淡で、我が子にも優しくなかった母。

 

 

著者はそんな母を愛せずにきたと自責の念を持ち、呆けた母をホームに入れた

ことを、「私は金で母を捨てた」と書いている。

 

だが母親が痴呆になったことで、母娘の関係は少しずつ変わっていき、本の

最後は亡くなった母親への「ありがとう。すぐ行くからね。」の言葉で締め

くくられている。(この時著者は既に癌だった)

 

 

この本を書くにあたって、昔の母との出来事を思い出しながら自分の心を見つ

めるのは、結構キツい作業だったのではないかと思う。

あと、赤裸々な内容なので、親類縁者の中には一方的に書かれて傷ついた人

もいるのではないかと、そのあたりも少し気になった。

 

 

内田春菊(漫画家)があと書きで、佐野洋子から彼女の赤ン坊へのプレゼントに、

「あんたをいじめる人がいたら、私が怒ってあげるからね」という手紙が入っ

ていたと書いている。

 

型破りな生き方で色々と批判もされていた内田氏にとって、著者からのこの

言葉は本当に嬉しかったろうと思う。