「内容」
『100万回生きたねこ』の著者が、実母との確執と和解を綴った本。
「感想」
あの絵本の作者にふさわしく、辛口で手厳しいのにどこかサバサバしていて、
文章にもユーモアがあり、面白く読んだ。
終戦の時に、中国から5人の子供を連れて引き揚げてきた逞しい母。
夫の死後、女手で子供達を大学まで出し、家事も人付き合いも完璧だった母。
しかし (母の)障害のある妹弟には冷淡で、我が子にも優しくなかった母。
著者はそんな母を愛せずにきたと自責の念を持ち、呆けた母をホームに入れた
ことを、「私は金で母を捨てた」と書いている。
だが母親が痴呆になったことで、母娘の関係は少しずつ変わっていき、本の
最後は亡くなった母親への「ありがとう。すぐ行くからね。」の言葉で締め
くくられている。(この時著者は既に癌だった)
この本を書くにあたって、昔の母との出来事を思い出しながら自分の心を見つ
めるのは、結構キツい作業だったのではないかと思う。
あと、赤裸々な内容なので、親類縁者の中には一方的に書かれて傷ついた人
もいるのではないかと、そのあたりも少し気になった。
内田春菊(漫画家)があと書きで、佐野洋子から彼女の赤ン坊へのプレゼントに、
「あんたをいじめる人がいたら、私が怒ってあげるからね」という手紙が入っ
ていたと書いている。
型破りな生き方で色々と批判もされていた内田氏にとって、著者からのこの
言葉は本当に嬉しかったろうと思う。