「内容」
クーデターにより権力を奪われた独裁者と、5歳の孫の逃避行の物語。
(2014年 製作国 英他合作)映画賞受賞。
「感想」
監督はイランからの亡命者で、舞台を“どこかの国”としたのは、 どこの国で
も起こり得る物語として撮りたかったからだそうだ。
物語の主人公は、政権維持の為に大勢の人間を処刑してきた老大統領。
しかしある日クーデターが勃発し、身内や取り巻きはいち早く国外に逃亡したが、
自分と孫だけが亡命し損ねてしまう。
大統領は旅芸人に変装して、「これはゲーム」と孫をなだめながら、2人で
ひたすら協力者の待つ場所に向かう。
だが革命軍から高い賞金をかけられた逃亡は困難の連続で、人々に紛れて逃げ
るその道中、男は様々な現実を見て己の犯してきた罪の深さを思い知る。
大統領に憎悪をつのらす人々。傍若無人に略奪を働く兵士達。
しかしこの映画では、圧政に屈していた一般の人間の罪も問い、暴力の連鎖の
恐ろしさを訴えている。
大統領を見つけた民衆が、彼を殺そうと怒涛のように押し寄せる姿に、8年前
リビアのカダフィ大佐が殺された時のニュース映像を思い出したが、あれと違う
のは、映画ではそれを止めようとする人間がいたことだ。
ハッピーエンドではないが、救いのあるラストで、5歳の孫の演技も光っていた。