「内容」
一人の男性を通して、イギリスの援助制度や失業問題にスポットを当てたドラマ
(2016年 製作国 英・仏・ベルギー) 映画賞受賞
「感想」
59歳のダニエルは、妻に先立たれ子も無く、アパートで独り暮らしをしていた。
長年大工として働いてきたが、心臓病を患って医者から仕事を止められた為、
国の援助を受けることする。
しかし制度が複雑な上、職員達は官僚主義丸出しで不親切な事この上ない。
おまけに、援助金はデジタル申請でなければ受け付けられないと言われ、
パソコンの出来ないダニエルは四苦八苦する。
何度もやり直し、他の件でも繰り返し出直しをさせられたダニエルは、徐々に
経済的にも追い詰められ、ある日とうとう我慢の限界に達する。
この映画はイギリスと世界中の、格差と貧富の差を目の当たりにしたケン・ローチ
監督が、引退を撤回して製作されたという。
若い母親が空腹のあまり、フードバンクで缶詰を貪るシーンは実話だそうで、
失業問題や“寝室税”の導入など、イギリスの厳しい現実がよく分かる。
※寝室税 = 英で2012年に施行された制度で、公営住宅に住む低所得者を対象に、
家族の状況に比して部屋数が多いとみなされた時は、住宅手当てが減額される。
隣の部屋の、チャラいが稼ぐのに必死な、気のいい黒人青年。
ここに越して来る前は、2年間ホームレス施設で暮らしていた極貧の母と子。
そんな彼らに、思いやりを持って助けの手を伸ばすダニエルの優しさや、セーフティ
ネットからこぼれ落ちた人の辛さがヒシヒシと伝わってくる映画だった。