ほたるBBの 絵と 本と 雑感日記

60代後半に再開したお絵描きと、読書の備忘録。考えさせられたことなども綴ります。

天、共に在り(アフガニスタン三十年の闘い ) (中村哲)NHK出版

 

「内容」
著者の生い立ち、アフガニスタンでの医療活動、全身全霊を傾けた灌漑水路
(かんがいすいろ)の建設についての記録。

 

「感想」
著者は、「百の診療所より1本の用水路を」と唱えて、アフガニスタンの現場で
直接建設の指揮を取って来た医師だ。


本書では著者が紛争の続く異国の地で、何故井戸を掘り続け、何十キロもの
用水路を開く為に尽力して来たのか、その経緯と建設の実際が語られている。


大洪水 ・テロ ・米軍による誤射事件 ・地方財閥の妨害 ・反米暴動 ・対立 

など、書き出しだらキリがないほどの、想像を絶する苦難の連続で、
「この7年間、精神と気力だけで生きていた」の言葉がズシリと重い。


沢山の写真が掲載されているが、その中でも特に、裸の幼児が動物のように
うずくまって泥水を飲む姿は衝撃だった。


読み終わってからもう一度見た、「ガンベリ砂漠横断水路通水」の写真には、
中村氏と建設に携わった人達が超えてきた辛苦が詰まっているようで、感慨深い

ものを感じた。

 

「現地30年の体験を通して言えることは、私たちが己の分限を知り、誠実である限り、
天の恵みとまごころは信頼に足るということです。」
外国の軍隊や一部の身勝手なNGОに対して、歯に衣着せぬ強い発言をする著者の
この言葉には、並外れた器であることがうかがわれ、圧倒される思いで読んだ。


ペシャワール会…1983年9月、中村氏の赴任決定をきっかけに発足し、現在も
 運営されている。