九州に引っ越して間もない頃、知人に頼まれて、保健所に持ち込まれていた生後
2か月の中型犬を引き取った。これが我が家で最初の飼犬となったチビ(♂)だ。
3歳の長男は、チビが可愛くて嬉しくて、遊んでいる間もずっと抱っこしていた。
チビが1歳半の時、台風で大変な大雨となり、近くの川が溢れそうになった。
当時住んでいた社宅は平屋で、川が溢れても逃げ場所は無く、車も無かった
私は、まだ幼い2人の子供を一人では守り切れないとパニックになった。
そのうち家の周りの水かさが増してきて、侵入してきた水は、あっという間に
玄関の上がり口と同じ高さになった。
この時になってやっと私は、庭に繋いでいるチビのことを思い出した。
当時の私は無知で、成犬は鎖で繋いで飼うものだと思い込んでいたのだ。
私は抱いていた2人をベビーベッドに置いて、「ウワーッ!」と叫びながら庭に
飛び出した。
チビは一面プール状態となった庭で、口に水が入らないようアゴを思いきり上
に向けて踏ん張っていた。
私はすぐにチビを抱えて鎖を外し、家の中に入れて体を拭きながら謝り続けた。
それ以来災害の報道がある度に、人に対しては勿論のこと、ペットや他の動物
たちの無事を祈らずにはいられない。