昔は放置子なんて言葉は無かったが、放ったらかしにされている子は居た。
私が20代半ばの時のことだ。
近所に顔も服も見るからに薄汚れていて、日中一人でブラブラしている
男の子(A君)がいた。年齢はまだ5歳で、両親は共働き。
小1の兄は普通に小ぎれいで、学校にもきちんと通っていた。
親はA君に昼食を用意していかず、小銭も与えていないため、兄が毎日給食
のパンを残してきて、ランドセルを背負ったままそれを食べさせていた。
ある時私はA君にせがまれて、(元)夫と一緒に彼を近所の公園に連れてった。
ベンチで元気に遊ぶ姿を眺めていたら、通りかかった年配の男性に突然、
「親ばっかりそんなキレイな恰好をして!」と吐き捨てるように言われた。
今迄はためらっていたが、数日後思い切ってA君をお風呂に入れてあげた。
親から苦情が来るかと思ったが、気付きもしなかったのか、何も無かった。
ある日、A君の家の玄関が開いていて、部屋が丸見えになっていた。
足の踏み場もない散らかりぶりに唖然としたが、もっと驚いたのが、家の前に
居た母親が、普通の優しいお母さんにしか見えなかったことだ(私とは初対面)。
隣人が私に、「あれで公務員なんだよ!」と母親を睨みつけながら耳打ちした。
程なくして私は引っ越したのでA君のその後は知らないが、1年生になって、
お兄ちゃんと学校の給食と、近所の人の見守りで逞しく成長したと信じたい。