ほたるBBの 絵と 本と 雑感日記

60代後半に再開したお絵描きと、読書の備忘録。考えさせられたことなども綴ります。

『そして殺人者は野に放たれる(日垣隆)新潮社』感想 

[内容]

心神喪失者の犯罪は“無罪”とする日本の裁判の在り方について問題提起。

                                                                            新潮ドキュメント賞受賞

[感想]

日本では「刑法39条」において、心神喪失又は心神耗弱と認定されると

不起訴か無罪になる。この規定が凶悪犯の刑の軽減に乱用されており、

被害者感情を無視するような判決が後を絶たないという。

 

著者は精神障害者と、精神障害者犯罪を混同してはいけないと言い、

懲罰よりも矯正に偏った刑罰の何が問題なのかを、多くの事例を挙げて解説。

 

毎年重大な罪を犯した精神障害者が娑婆に戻されてくるが、その多くは泥酔

覚せい剤などで刑が軽くなることをよく分かっていて、野に放たれた後

再犯を繰り返している。そのため著者は、彼らの処遇施設を一日も早く作るべ

きだと訴える。

 

こうした考えは一般市民とかけ離れたものではなく、精神鑑定を盾に何でも

無罪に持ち込もうとする弁護士と、それを認める判決に違和感や不信感を

抱く人は多い。

又、この手の犯罪は報道関係もタブー視する傾向があるそうで、確かによく分

からないことが多く、本書に書かれた事例を読んで、正直恐さを感じた。

 

精神の病で罪を犯した人間は哀れだが、罪は罪。

遺族の思いを汲むことと、再犯防止に本気で取り組んでほしいと思う。

ちなみに著者は、「刑法39条が乱用され暴走している現実に鑑み、この法律は

削除されるべき。」と言明している。

法律の歴史と、外国と比較した解説も分かり易くて良かった。

 

※本書出版の2年後(2005年)に、一定期間入院させて治療するなどの処遇を

 決定する医療観察制度「心神喪失者等医療観察法」が施行された。

『クライム・ヒート (主演) トム・ハーディ』感想 

[内容]

マフィアの金を盗んだバーの経営者と、その従弟が追い詰められていく様を

描いたサスペンスドラマ。         (2014年 製作国 アメリカ) 

クライム・ヒート (字幕版)

[感想]

ボブは従兄のマーヴが経営するバーで働いており、時々1人で教会に通う

ような真面目な男だが、人に言えない過去があった。

 

2人は、マフィアのお金を預かるという裏の銀行の仕事もしていたのだが、

ある日2人組の強盗に押し入られ大金を盗まれてしまう。だがそれはマーヴ

が仕組んだ狂言強盗で、真相を知ったマフィアに脅され、彼らは次第に追い

詰められていく。

 

私はヤクザ関係の映画は苦手で、評判の良いものでも途中で観るのをやめてし

まうことがあるのだが、この映画は派手な抗争シーンが無く、ボブがゴミ箱に

捨てられていた子犬を助けたところから、目が離せなくなってしまった。

 

ある時ボブが呟いた。「ある種の罪を犯すと絶対に抜け出せず、死ぬのを

悪魔が待ち構えている。」 この言葉にはマフィアと、ある男のおぞましいほ

どの執拗さと、そして静かに態度を豹変させたボブ自身を見て納得。

 

裏社会と関わりのある生き方をしながらも、過去の過ちを胸にしまい、良識も

弱い者を守る優しさもあった筈のボブが、札付きの連中に否応なしに巻き込

まれていく様にはハラハラさせられたが、哀れでもあった。

 

ボブ役は、演じる俳優によってイメージが大きく変わりそうだが、トム・ハーディ

はこの役にしっくりとハマっていて良かった。

映画の中で少しずつ成長していくピットビルの子犬と、ボブが微かに笑みを浮

かべた思いがけないラストが嬉しい。

それは“自転車泥棒”になる 

息子が中学生の時のこと。同じ中学に通う知人(Bさん)の子供の自転車が

学校の自転車置き場から消えてしまい、Bさんはすぐに盗難届けを出した。

翌日には犯人が分かったが、同じ学校の生徒で、出来心でちょっと拝借して

しまったらしい。しかしバレるのが怖くてその辺に乗り捨ててしまったため

面倒なことになった。

 

Bさんは警察に「どうしますか?」と聞かれたが、届けは取り下げなかった。

その話を本人から直接聞いて、私が思わず「えっ?!」と言ったところ、

Bさんから「当たり前でしょ?泥棒ですよ!」という言葉が返ってきた。彼女

は間違ったことは言ってないかもしれない。でも、何だか心がモヤモヤした。

            

次も少し昔のことで、知人から聞いた話だ。

知人の友人(Aさん)の子が中学生となり、通学用の自転車が必要になった。

買いに行こうとしていた矢先、不燃ごみの日にまだ十分に使える自転車が捨

てられてるのを見つけ、Aさんは喜んでそれを家に持ち帰った。

 

ある日Aさん宅に警察から電話がかかってきた。慌てて駆けつけると、Aさん

の子供が大泣きしていた。その自転車には盗難届が出ていると言われ、驚いて

ゴミ置き場から拾った経緯を説明したが、結局窃盗として処理されてしまった

という。この話にもやっぱり、心がモヤモヤしてしまう。

 

今は、資源物の持ち去りを条例でハッキリ禁止している自治体もあり、

自転車や家電なども然りで、ゴミとして出されていた物だからと勝手に持ち

帰るのは、場合によっては処罰の対象になるので注意が必要だ。

『生き方は星空が教えてくれる(木内鶴彦)』感想

[内容]

著者が臨死体験の時に見た過去と未来、宇宙について語られている。

[感想]

著者は1954年生まれの彗星捜索家。航空自衛隊に勤務していた22歳の時に、

突然病魔に襲われて臨死体験をする。回復後は退官して、子供の頃からの

趣味だった天体観測を再開。その後幾つかの彗星を発見して注目される。

 

著者が臨死体験で見た宇宙の歴史は、宇宙物理学者の考察とはかなり違って

いて、「宇宙の始まりは膨大な意識」でそれは全てを知っているという。更に

 

「私達が生きている世界は、“膨大な意識”が作り出した“ひずみ”が解消に向かう

時のエネルギーの流れであり、その中で様々な経験をすることに意味がある。」

「未来は確定されておらず、2つの情景が重なって見えた。」と続く。

 

臨死体験中に、自分自身の子供の頃の体験も謎解きのように解明されていく。

そこで著者は、過去の出来事は真実かどうか証明できないが、未来に関しては

検証が可能だと考えあちこちに自分のメッセージを残していく。

結果、調べることが出来た場所においては、全て確認が出来たそうだ。

 

本書には美しい天体のカラー写真が何枚も載っていて、観測の話も面白い。

天の川を観ていると、星の奏でる音が一つのメロディになって脳裏に響いて

くるそうで、実際に音が聞こえるわけではないがバッハの曲に似ているとか。

 

観測場所を確保するために、熊とマーキング合戦をした話は面白かった。

しかし山は元々動物たちのテリトリーで、昔の人は山里に畑を作る時、麓に

必ず動物の食物となるような木を植えていたそうで、これには考えさせられた。

 

著者は“人類の役割は地球の自然環境を整えること”と考え、“太古の水”に

取り組み販売もしている。それもあってか、本書を“とんでも”扱いする人がい

るようだ。水のことは私には分からないが、天体観測の解説と共にその他の

エピソードにも良い話が多く、それだけでも読む価値があると思う。

『マローボーン家の掟(主演)ジョージ・マッケイ』感想  

[内容]

田舎の一軒家で、自分達だけの掟に従って生きる4人兄妹のサスペンス。

                 (2017年 製作国 米・スペイン)

マローボーン家の掟 [Blu-ray]

[感想]

1968年。イギリから母親と4人の子供達が、アメリカの田舎町にある今は誰

も住む人のない母の生家に引っ越してきた。

何やら訳ありのようで、母親は子供達に「イギリスでのことは全て忘れなさい。」

と言い聞かせ、子供達は言いつけを守って決してその事を口にせず、徐々に

この町に馴染んでいった。

 

しかし間もなく母親が重篤な病となり、長男のジャックに「4人でこの家で暮

らし続けなさい。貴方が21歳になったら、弟妹の面倒を見る権利が得られる

ので、それまでは私の死は隠し通しなさい。」と言い残して亡くなる。

 

程なくしてこの家で幽霊騒ぎが始まり、ジャックは家中の鏡を取り外してし

まう。どうやら屋根裏部屋に秘密があるらしい。

その後はジャックが時々買い出しに行くくらいで、他の3人は外には一歩も

出ずに、母の遺言を守ってひっそりと暮らすようになった。

 

ネタバレになるのでこれ以上は書けないが、一連の出来事には驚くような

真相が隠されており、サイコパスな父親と哀れな弟妹たちの姿は、幽霊騒ぎ

よりも衝撃だった。途中怖いシーンもあるが、どちらかというとヒューマン系

サスペンスかも。

 

長男の心の傷と闇の深さに胸が痛んだが、寄り添ってくれるガールフレンド

の愛情と芯の強さが素晴らしい。事前に想像していた以上に面白い映画で、

予想だにしない展開だが悲しくも心温まるラストが救いだ。